重商主義

主として 16世紀前半から 18世紀前半にかけてヨーロッパ各国に支配的にみられた経済政策とそれを裏づけた理論。初期資本主義時代を代表する経済思想輸出超過による金銀の流入が国富の増大のために不可欠であり,この結果を得るために貿易の統制が必要であるとする貿易差額説を理論的中核とする。イギリスでは重商主義思想はその歴史的変遷からみると大きく3つに分類される。第1は G.マリーンズ,T.ミルズらに代表される重金主義で,貨幣としての金銀を極度に重視し,そのためには個々の国との貿易差額を順にすることが必要であるとする個別的貿易差額主義を採用した。第2は T.マンを代表とする全般的貿易差額主義であって,全体としての貿易バランスを強調し,単なる貨幣の保蔵に代って「貨幣は貿易を生み,貿易は貨幣を増大する」とした。第3は C.ダベナントらによる自由貿易論で,両貿易差額説を否定したが,国内市場より対外市場を優先した点に重商主義的特徴がある。フランスでは J.コルベールが重商主義の推進者として有名である。

<例文>
18世紀、西ヨーロッパでは貿易が極めて重要になるが、それとともに、政府の権限によってつくられ重商主義理論によって正当化された夥しい数の規制が煩わしいものになった。・・・危機の二十年(E.H.カー著)

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