ビジョンを語れるのは勝者だけ

会社における「勝者」とは、利益を上げた者である。会社にとって適正な利益を上げることは最低条件であり、それもせずにビジョンだ、戦略だ、成長だ、人材育成だと言っても、そんなものは「床の間の掛け軸」に過ぎない。

どんな手法にせよ、利益を出している経営者の言葉に人は耳を傾ける。

かつてカルロス・ゴーンが日産にやってきたとき、フランスから連れてきた部下はわずか17人。パリを発つ前、その精鋭たちにこう伝えたという。

「日産を変えようなどと思うな。我々は日産を立て直す手助けをする。それに尽きる。」

彼らが日産に来て最初にやったことは、会派圧、営業、生産など異なるせくしょの課長ら100人の日本人社員を集め、徹底的に議論させたことであった。その中から良いアイディアを採用して作られたのがあの有名な「日産リバイブル・プラン」である。

カルロス・ゴーンは古い経営陣ではなく、第一線の現場を知る若手の意見を採用した。そして初年度の黒字化、2年後の営業利益4.5%、3年後までに有利子負債を半減という公約を達成した。

プロの経営者の面目躍如であった。

勝てる経営者の言葉には力が宿り、社員にもお客様にも浸透して行く。誰でもビジョンを語るのは自由だが、人の心に届くのは勝者の言葉なのである。

・・・・上司の心得(佐々木恒夫)

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