仕事や勉強やスポーツでもしかり、いろいろな分野で活躍している人はやり抜く力に秀でている。
この本の筆者であるアンジェラ・ダックワークスさん自身、父親に「おまえは天才じゃないんだ」と言われ続けた少女であった。その少女が大人になって「マッカーサー賞」、別名「天才賞」を受賞したのだ。
しかも受賞の理由は、人生でなにを成し遂げられるかは、「生まれ持った才能」よりも、「情熱」と「粘り強さ」によって決まる可能性が高い、と突きつめたことなのだ。
「やり抜く力」とは「ひとつの重要な目標に向かって、長年の努力を続けること」で、「情熱」と「粘り強さ」をあわせ持っていることと説く。
要するに大きな成功を収めた人は断固たる強い決意があり、それがふたつの形となって表れている。
第一に、このような模範となる人たちは、並外れて粘り強く、努力家だった。第二に、自分が何を求めているかをよく理解していた。決意だけでなく、方向性も定まっていたということだ。
では具体的にどんな人のどんな行動が当てはまるのかについて、アンジェラ・ダックワークスは様々な事例を研究し、分析した結果を紹介してくれている。面白い、参考になる、といった内容が多く興味深い。
これまで人よりも何をするにも時間をかけなければ理解できず、苦労してきた自分にとって非常に参考になる内容だ。印象に残った文章の抜粋を以下に紹介する。
・つまり「やり抜く力」の強い生徒たちは、どんどん勝ち進んで行ったのだ。彼らはいったいどうやって結果を出したのか?人よりも何時間も多く練習し、たくさんのスペリング・コンテストに出て場数を踏んだのだ。
・「才能には生まれつきの差がある」などと決めつけずに、努力の重要性をもって考慮すべきなのでは?生徒たちも教える側も、もう少し粘り強くがんばれるように、努力を続ける方法を考えるのは、教師である私の責任なのではないだろうか。
・生徒たちのことを深く知るほど、誰もが複雑な日常生活のなかで、さまざまな複雑な事柄を理解していることがわかった。はっきり言って、それにくらべれば方程式のxの値を求めるほうがよっぽど簡単ではないだろうか。
・「私がふつうの人より優れている点は、普通なら見逃してしまうようなことに気づき、それを注意深く観察することだろう。観察にかけても、事実の集積にかけても、私は非常に熱心にやってきた。さらに、それにも増して重要なことは、自然科学に対して尽きぬ情熱を持ち続けていることだ ダーウィン自伝より」
・「難問にぶつかると、ふつうの人は『またあとで考えよう』などと言って、たいていはそのまま忘れてしまう。ところがダーウィンは、そういういい加減さを自分に許さないようなところがあった。彼は突きとめたいと思っている課題は、すべて頭の片隅にとめておき、少しでも関連のありそうなデータが表れたら、いつでもすぐにその問題と突き合わせることができた ダーウィン自伝より」
・「最高のパフォーマンスは、無数の小さなスキルや行動を積み重ねた結果として生み出される。それは本人が意識的に習得する数々のスキルや、試行錯誤する中で見出した方法などが、周到な訓練によって叩き込まれ、習慣となり、やがて一体化したものなのだ。やっていることの一つ一つには、特別なことや超人的なところはなにもないが、それらを継続的に正しく積み重ねていくことで生じる相乗効果によって卓越したレベルに到達できる ダニエル・F・チャンブリス」
・「一つのことをひたすら考え続け、ありとあらゆるものを活用し、自分の内面に観察の目を向けるだけでなく、ほかの人々の精神生活も熱心に観察し、いたるところに見習うべき人物を見つけては奮起し、あくなき探求心をもってありとあらゆる手段を利用する ニーチェ」
・「やり抜く力」のある人にとっては、1日にどれだけ努力するかより、くる日もくる日も、目が覚めたとたんに「きょうもがんばろう」と気合を入れ、トレッドミルに乗り続けることが重要なのだ。
・偉業を成し遂げた人たちに、「成功するために必要なものは何ですか?」とたずねると、「夢中でやること」や「熱中すること」と答える人はほとんどいない。多くの人が口にするのは「熱心さ」ではなく、「ひとつのことにじっくりと長いあいだ取り組む姿勢」なのだ。
・「チームが首尾よくなし遂げるべきことは山ほどあるが、その屋台骨となるビジョンを確立することこそ、もっとも重要である」
・「やり抜く力」というのは、ひとつの重要な目標に向かって、長年の努力を続けることだ。
・ほとんどの人は人生経験を重ねるにつれ、より誠実になり、自信や思いやりが増し、穏やかになることがわかっている。