胆のうポリープ

胆のうの内面に出来る、限局した隆起病変の総称。
基本的には良性のものがほとんどで長期間に渡っておとなしい病気です。しかし、胆のうポリープの中には悪性のもの(=胆嚢癌)が存在することがある。

①胆のうポリープの種類
胆のうポリープの種類は、大きく分けて、以下の5つの種類があります。胆のうポリープの診断は、最終的には手術で胆のうを切除し、病理検査にて確定する。

1)コレステロールポリープ
胆のうポリープの中で約90%を占める、最も多い種類です。胆のうの中に多発しやすいことが特徴です。多くは数mm以内のものが多く、10mm超えることは稀である。良性。

2)腺腫(せんしゅ)(せい)ポリープ
基本的には良性と考えられていますが、一部に胆嚢癌の発生源になる関係性が報告されている。

3)過形成ポリープ
胆のうの粘膜表面の細胞(‘上皮’と呼ぶ)が過剰に増殖したタイプ。

4)炎症性ポリープ
慢性胆のう炎を起こした患者さんなどに起こる、粘膜細胞の増殖が原因で発生するタイプ。良性。

5)胆嚢癌
文字通り胆のうの粘膜に出来る悪性腫瘍です。ポリープの段階で見つかる胆嚢癌は比較的早期の病変が多く、適切な治療により根治的治療を行うことが可能。

②胆のうポリープの検査
以下のような検査がある。

1)血液検査
肝機能・胆道系酵素の異常や腫瘍マーカーのチェックを行います。しかし、あくまで確定診断や除外診断ができる検査ではなく、補助検査という捉え方になる。

2)腹部超音波検査
体外から超音波を使った器械を当て、胆のうの病変を検査します。胆のうポリープの検査で最も行うことが多く、患者さんの体への負担も軽いもの。

3)超音波内視鏡検査
胃カメラの先端に特殊な超音波検査機器が接続された検査です。体表からの検査に比べ、より胆のうに近い場所から検査を行うことで、詳細な情報が得られます。専門的な内視鏡医が検査を担当する。

4)造影CT検査
造影剤を注射し、CT検査を行います。胆のうポリープの形・大きさと同時に胆嚢癌が考えられた場合の手術に際して、リンパ節への転移の可能性を検索したり、周囲の血管などの構造をチェックするのにも重要。

5)内視鏡的逆行性胆道造影検査
十二指腸まで内視鏡を入れて、胆管から胆のうに管を挿入し、細胞を取ったり(細胞診検査)、造影剤を入れてレントゲン検査を行ったりします。細胞診検査は手術で胆のうをとって診断する以外に胆のうポリープを「癌」と診断できる唯一の検査方法。

③胆のうポリープの治療の仕方
胆のうポリープの治療は、胆嚢の摘出である。胆嚢ポリープの治療では、胃や大腸のポリープの様に「カメラでポリープだけを取る」というわけにいかない。そのため、胆嚢摘出手術を行うことになる。胆のうポリープと診断された段階で、全ての方が治療(手術)する必要はない。治療の対象となるのは、以下のように胆嚢癌の存在する可能性があるものになる。

【胆嚢ポリープの治療が必要な人】

① 胆のうポリープが10mm以上

② 経過観察の検査で大きくなってきている

③ 大きさにかかわらずポリープの茎が幅広いもの(「広基性病変」)

④ 超音波検査で癌が疑われる所見(充実性低エコー所見)がある場合

その他、血液検査で腫瘍マーカー(CA19-9, CEA, DUPAN-2, SPAN-1など)、PDG-PET検査、細胞診などで悪性の可能性が否定できない場合。

【手術の方法】
胆のう摘出手術の方法には、腹腔鏡下胆のう摘出術と開腹胆のう摘出術がある。

胆のうポリープで胆嚢癌の可能性が少ない場合は、腹腔鏡下胆のう摘出術を行います。ポリープの場所によりますが、肝臓に近い場合は、胆嚢を組織をすべて切除する全層切除を行います。術中、明らかな浸潤の所見を認めた場合には、開腹手術に変更する場合がある。

胆嚢癌の可能性が高いと判断した場合、開腹での胆嚢摘出術を行います。場合により転移を起こしうる周囲のリンパ節(肝門部リンパ節)を同時に切除して、病変を取りきる手術を行う。

手術で摘出した胆のうは病理検査に提出します。通常、病理組織診断には1週間前後時間が必要ですので、入院期間によっては退院後に外来で結果の説明と今後の治療方針の相談を行う。

【 手術しない場合 】
胆のうポリープが胆のう摘出手術の必要はないと評価されて経過観察の方針になった場合でも、ポリープが大きくなってこないか、形性状に変化がないか、超音波検査やCT検査などで定期的に検査を行う必要がある。経過観察中に手術を行う基準に該当する徴候が出た場合、その時点で治療を行うことになる。

 

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