<概要>
渦電流探傷試験は、電気を通しやすい材料である導電材料の表面及び表面近くのきずを検出する方法である。浸透探傷試験や磁粉探傷試験とは違い、きずの拡大像を見るのではなく、きずの有無を電気信号として表示させる。きずを検出するのにコイルを使用する。
交流電流を流したコイルを試験体に近づけると、試験体には電磁誘導によって渦電流が流れる。きずがある場合とない場合では渦電流の流れ方が異なり、この流れ方の相違を探傷器の表示機場に電圧の変化としてモニタリングする。
渦電流による磁束はコイルのインピーダンス(交流回路における抵抗のこと)を変化させる。渦電流探傷試験では、電磁誘導を使うため交流独自の抵抗であるインピーダンスの変化を、ブリッジ回路を介して電圧の変化として検知している。
渦電流探傷試験では、インピーダンスの変化の大きさだけではなく、その位相もきずに関する重要な情報として検出する。
<適用事例>
・内挿コイルによる熱交換器チューブの探傷
多くの工場やプラントでは、流体の熱を管理し制御するために熱交換器が使われている。2つの流体間で熱を交換するために、熱交換器の内部には多数のチューブが配置されている。このチューブが腐食やエロージョンでもともとの厚さが薄くなたり(減肉)、割れが貫通したりすると、事故につながる可能性もある。このため定期的にチューブの探傷試験が行われる。
最初に材質と寸法が試験するチューブと同じか同等の対比試験片を使って、信号評価線図を作る。
チューブの中に内挿コイルを挿入すると、チューブの内径とコイルとの間にある隙間の分だけコイルはガタガタと動く。この動きはコイルと試験体表面との距離を変えることになるので、コイルのインピーダンスを変化させて信号として現れてくる。この信号をガタ信号と呼ぶ。