一般に、騒音あるいは地面の振動は非常に複雑な現象になっていて、多数の周波数成分が合成されたものである。この複雑な現象を特定の周波数ごとに分解することを周波数分析という。
周波数分析を行うためにの分析器には多くの分析方式があり、分析の目的に応じて選択される。工場等の騒音測定、建築関係の遮音性能、室内騒音評価、会話妨害評価などの場合には、オクターブバンド分析が適当である。音源対策の場合には、1/3オクターブバンド分析器が適当である。
上記の理由はまだ掘り下げられていないのでここは飛ばす。
なお振動公害に関連する振動測定では、測定周波数範囲が1~80Hzであり、低周波数のオクターブバンドフィルタは帯域幅が広すぎるので通常1/3オクターブバンドフィルタが用いられる。さらに高い周波数分解能を必要とする場合にはFFT(高速フーリエ変換)方式の分析器が用いられる。
ここの低周波数のオクターブバンドフィルタは帯域幅が広すぎる、の意味はよくわかっていない。
(1)オクターブ及び1/3オクターブバンド分析器
①オクターブについて
まずオクターブという言葉で躓いてしまう人もいるだろう。音楽を学んだ人であれば当然、聞いたことがあると思うし、自分もピアノを学んでいたので知っているつもりであるが、具体的に説明しろ、と言われるとできない。オクターブとは次のとおりだ。
オクターブとは、例えばドの音から次の上のドの音との関係のように周波数比が 2 倍となる音程を意味しています。また、オクターブバンドとは、ある周波数を中心にして上限と下限の周波数比が 1 オクターブとなる周波数の帯域(バンド)のことで、その中心の周波数をオクターブバンド中心周波数と呼んでいます。また、オクターブバンドを 1/3 に分割したものを、1/3 オクターブバンドといいます。 下図のように、音楽の平均率音程とは、1 オクターブを定比的に 12 等分した音程で、1/12 オクターブバンドとなっている。
この説明でなぜ音楽の平均率音程とは、1オクターブを定比的に12等分した音程になるのかわからないがここは別途、掘り下げるとして次に進む。いずれにせよオクターブとは 2 倍の周波数を意味する。
耳に感じる周波数特性が等比的なため、オクターブ分析がよく使われています。計測対象とする騒音に対して可聴周波数の周波数範囲において、1/1 オクターブあるいは 1/3 オクターブの規格に定められたバンドパスフィルタを通して各々の帯域毎の音圧レベルを求めます。フィルタの特性などは、JIS C 1514:2002 に規定されている。フィルタの話も別途掘り下げるので割愛する。
②オクターブ及び1/3オクターブバンド分析器について
オクターブ及び1/3オクターブバンド分析器の種類には、フィルタ毎に手動で切り換えて測定する分析器、全フィルタの出力を同時に表示する実時間分析器、フィルタを内蔵した騒音計などがある。
騒音計あるいは振動レベル計から分析器に加えられた信号は、各フィルタの帯域幅(バンド)にある周波数成分の出力として得られ、中心周波数に対するバンド音圧レベル及びバンド加速度レベルが測定できる。
1つのフィルタの出力には減衰帯域(通過帯域外)の成分も含まれ、その程度はフィルタ特性の急峻性で決まる。フィルタ特性や指示部の性能に関しては、JISC1513で規定され、性能によってクラス1とクラス2に分類される。一般の測定ではクラス2の性能で十分であるが、精密測定ではクラス1が用いられる。
フィルタ特性の定義を図に示す。中心周波数fm(Hz)はJISに規定されていて、下限帯域端周波数f1(Hz)と上限帯域端周波数f2(Hz)との間のそれぞれの関係は次のように与えられる。
fm=√f1f2
2のべきの系(厳密な中心周波数を計算するときの計算式の1つである)で表すと、オクターブバンドフィルタの場合
f2=f1
f1=fn/√2≒0.7071fm
f2=√2fm≒1.4142fm
同じく1/3オクターブバンドフィルタの場合
f2=3√2f1≒1.2599f1
f1=fm/6√2≒0.8909fm
f2=6√2fm=1,1225fm
(2)騒音・振動解析装置
騒音対策は振動対策の場合には、各騒音・振動発生部の寄与度、騒音と振動の関係、騒音・振動と機械との関連などを調べるため詳細な周波数分析を必要とすることがあり、そのようなときはFFT方式の周波数分析器や1/Nオクターブバンド分析器が使用される。1/Nオクターブバンド分析器は、1オクターブバンドから1/24オクターブバンドまでなど任意に帯域幅を設定して分解能を上げることができる。
また、これらの分析器は騒音・振動解表示析装置として構成されているものが多く、例えば、近接した二つのマイクロホン(インテンシティマイクロホン)を用いて周波数別、方向別の音響インテンシティを測定し、音響放射の特性をグラフィック表示するものも実用化されている。