嫌われる勇気

アドラーはフロイト、ユングと並ぶ三大巨頭の一人とされる。もともとアドラーは、フロイトが主宰するウィーン精神分析協会の中核メンバーとして活躍した人だった。しかし学説上の対立から袂を分かち、独自の理論に基づく「個人心理学」を提唱する。

アドラー心理学は、肩苦しい学問ではなく、人間理解の真理、また到達点として受け入れられている。しかし時代を1000年先行したとも言われるアドラーの思想には、まだまだ時代が追い付きれていない、と言われている。

ではアドラーの思想とは何なのか。この本の中で、悩める青年が人は今日からでも幸せになれる、と説く哲学者のもとを訪ねその真意を問いただすところから会話が始まる。哲人がアドラー心理学を会話の中で説明していくのだが、重要だと感じた言葉を以下に抜粋する。

・過去の原因にばかり目を向け、原因だけで物事を説明しようとすると、話はおのずと「決定論」に行き着く。すなわち我々の現在、そして未来は、全てが過去の出来事によって決定済みであり、動かしようのないものである。
・アドラー心理学では、過去の「原因」ではなく、いまの「目的」を考える。我々は原因論の住人であり続ける限り、一歩も前に進めない。
・トラウマは存在しない。明確に否定する。「いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。我々は自分の経験によるショック いわゆるトラウマに苦しむのではなく、経験の中から目的にかなうものを見つけだす。自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである」
・我々はみな、なにかしらの「目的」に沿って生きている。それが目的論である。
・トラウマは存在しない。我々は自分の経験によるショック いわゆるトラウマに苦しむのではなく、経験の中から目的にかなうものを見つけだす。自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである。我々は過去の経験に「どのような意味を与えるか」によって、自らの生を決定している。人生とは誰かに与えられるものではなく、自ら選択するものであり、自分がどう生きるかを選ぶのは自分である。
・我々はみな、何かしらの「目的」に沿って生きている。これが目的論である。
・人は怒りを捏造する。相手を屈服させ、自分のいうことをきかせるため、その手段として怒りという感情を捏造する。
・言葉で説明する手順を面倒に感じ、無抵抗な相手をより安直な手段で屈服させようとした。その道具として、怒りの感情を使った。
・怒りとは出し入れ可能な「道具」である。
・我々は環状に支配されて動くのではない。そしてこの「人は感情に支配されない」という意味において、さらには「過去にも支配されない」という意味においてアドラー心理学はニヒリズムの対局にある思想であり、哲学である。
・過去にどんな出来事があってとしても、そこにどんな意味づけを施すかによって、現在のあり方は決まってくる。
・大切なのは、何が与えられているかではなく、与えられたものをどう使うかである。
・純粋な意味での「悪=ためにならないこと」を欲する者など、一人もいない。
・ライフスタイル(人生における、思考や行動の傾向)が先天的に与えられたものではなく、自分で選んだものであるのなら、再び自分で選び直すことも可能なはずである。
・アドラー心理学は勇気の心理学である。

まだまだこの本の書評は付け加えていくが、こんなことを考えた人が過去にいたのだと感動した素晴らしい哲学であるし、この本は会話を通して理解を深められるので、読書をお勧めしたい。

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