十八番(おはこ)

おはこ、といえば自分の得意なレパートリーのこと。唄あり、踊あり、楽器演奏あり、人によってそのジャンルは様々。レパートリーとは元々倉庫のこと、倉庫にどれだけの荷物があるか、つまり音楽で言えば、曲の在庫があるか、と言うことになる。その曲の在庫の中でも最も得意な物を「おはこ」と呼ぶのだが、元々この言葉は歌舞伎から来ている。歌舞伎・市川家に伝わる荒事の演目、七世団十郎が言い出し九世がこれを大成。この「十八番」という演目は封印をした箱に納め、みだりに上演してはならぬとしたことから「おはこ」称して権威づけられた。「不破・ふわ」、「鳴神・なるかみ」、「暫・しばらく」、「不動・ふどう」、「嬲・うわなり」、「象引・ぞうひき」、「勧進帳・かんじんちょう」、「助六・すけろく」、「押戻・おしもどし」、「外部売・ういろううり」、「矢の根・やのね」、「関羽・かんう」、「景清・かげきよ」、「七つ面・ななつめん」、「毛抜・けぬき」、「解脱・げだつ」、「蛇柳・じゃやなぎ」、「鎌髭・かまひげ」の十八種は必ずしも市川家に伝わるだけのものではない。

<例文>
自慢話というのは二流、三流の人間のオハコだから、普段の会話の中に自慢話が出るのはごく一般的なことだ。・・・大人の流儀(伊集院静 著)

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