創造性や戦略性が官僚制組織という足腰に支えられていることを再認識するべきである

老化した官僚制機構ばかり考えるので「官僚制=悪」と思い込むことが多いのだが、実際には優れた官僚制機構を念頭に置くと、色々良い面もあることは明らかであろう。

巷では、「官僚制組織が創造性や戦略性を圧殺する」と信じられているようだ。しかし、それは「老化した官僚制」に当てはまることかもしれないが、健全な官僚制には当てはまらない。実は官僚組織がしっかりとできているから、その足腰の上に創造性や戦略性の発揮が可能になるのである。

もし官僚制機構がしっかりしていなければ、その分だけ不正確な情報に基づいて組織が行動しなければならなくなったり、部下のミスから発生した問題の処理に上司の時間が無駄に費やされたりする。その結果、より創造的な仕事をするべきスタッフや、より戦略的な仕事をするはずの経営管理者までミスの処理に走らされたりする。

ミスの多い組織には創造性や戦略性を求めることなど不可能である。過剰にルールに縛られてたり、ヒエラルキーを尊重しすぎることも問題だが、それを破壊したからといって創造性や戦略性が手に入るわけではないのだ。

実際、ケネディ政権が適切な戦略的意思決定を行った背後には、航空写真解析にミスや落としが多く、また時間も多くかかっていたら、ケネディ政権の意思決定があれほど素早く、あれほど適切に行われていたかどうか疑わしい。

・・・組織戦略の考え方(沼上幹)

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