芳賀繁さんの「失敗のメカニズム」を読んだ。

機械設計技術者として設計ミスや設計変更によるトラブル等、どちらかというとものづくりの視点で購入したのだが、失敗は奥が深いものだ。

間違い電話や忘れ物や遅刻等、たいしたことのないと思える失敗でも失敗が原因で不慮の事故が発生し、多くの命が失われているケースもある。

うっかりミス、判断ミス、錯覚、憶測、安全規則違反などが原因で多くの犠牲者がでた事故の例は枚挙にいとまがない。

大事故を分析すると、そこには必ずといってよいくらいエラーがみつかる。

トラブルの際に冷静な判断力を発揮できるためにはどうすればよいか。

過去の事故事例の検討などを通して疑似体験を多く積んだり、製品を開発する立場であれば、作る側と使う側が開発段階から1つのテーブルにつき、最大限のイマジネーションを発揮して話し合いながらケースバイケースで最善と思われる案を採用するといった取り組みが必要だ。

本書では人間を情報処理装置にたとえ、どこで失敗が起きたかによってヒューマンエラーを入力過程(認知、確認のミス)、媒介過程(判断・決定のミス)・出力過程(操作・動作のミス)の3つに分類し、分かりやすく解説している。

例えば入力エラーなのであれば情報表示、通信装置の改良、媒介過程なのであれば判断が謝らないよう、システムや機器のしくみに関する誤解や無理解を直す等、教育が基本になる。

そして人間の情報処理過程の各段階で記憶システムとの情報のやりとりがあり、注意と記憶の失敗について言及される。

仕事でもよく間違いが起きるのであるが、ルールが複雑になるとグループ員でも知識やその深さにバラツキが生じ、なおかつそのルールも色々な問題が発生する度に変わる。

記憶術として以下を紹介している。

・情報を7個以内に分割またはまとめる。

・イメージ化

・言語化

・理解

最後の理解は、ルールや手順を頭から丸暗記させるのではなく、なぜそうしなければならないのか、なぜそうするほうがよいのかを教えれば、ずっと効率的に覚えられるし、記憶したことを忘れにくいことを示しており、納得する。

理解が記憶を助けるのである。

昔、JOC臨界事故があって、当時はこの事故の原因がよくわからなかったが、本著を読んで初めて知った。驚くほど危険な作業をしていた事実を知ったのだが、リスクテイキング(危険を認識したうえであえて行動すること)の度が行き過ぎている。

しかし同じ人間がやったことなのだから、誰しもそのような行動を起こしかねないことを示した教訓なのである。

昨今は安全文化がかなり社会や企業に浸透していると思うが、まだまだ気を抜くとすぐに教訓を忘れてしまうのも人間なのだ。

組織においては日々の節制からリーダーシップ、人間関係、組織の雰囲気、子供のころの教育や民族性等、強い影響を受ける。

失敗は奥が深い。ジェームズ・リーズン博士という方は、組織がよき安全文化を獲得するために4つの要素を取り入れなければならないと言う。

「報告する文化」・・・エラーやミスを隠さず報告し、その情報に基づいて事故の芽を事前に摘み取る努力がたえず行われること。

「正義の文化」・・・叱るべきは叱る、罰するべきは罰するという規律。

「柔軟な文化」・・・ピラミッド型指揮命令系統を持つ中央集権的な構造を必要に応じて分権的組織に再編成できる柔軟性を組織が持つこと。

「学習する文化」・・・エラーやニアミスのデータ、過去または他の企業や産業で起こった事故、安全に関する様々な情報から学ぶ能力、学んだ結果、自らにとって必要と思われる改革を実行する意思。

人間の行動には危険がつきものなら、人間の行動には失敗もつきものである。失敗の特性を理解し、発生要因をコントロールすることによって、大きな失敗の可能性を最小限に抑え、小さな失敗からできるだけ多くのことを学ぶことが必要だ。