自家薬籠中の物とは、いつでも自分の思う通りに利用できる人や物のたとえ。また、自在に使いこなせるくらいに身に付いた知識や技術のたとえ。
「自家」とは自分、「薬籠」とは薬箱のこと。
自分の薬箱に入れてある薬品のように、いつでも自分の思うままに使えるものということから。
唐の元澹が首相の狄仁傑に「ご使用になっている薬の一つに、私を加えてお使いになって下さい」と言ったところ、狄仁傑は「君はすでに私の薬籠中のもので、欠かせない人だ」と言ったという『唐書・儒学下・元澹伝』にある故事に基づく。
古くは「必要な人」という意味で使われていたが、今では多く自分のものとした知識や技術に対して使われる。
「自家」を略して「薬籠中の物」ともいう。
<例文>
いま日本人が軽蔑の対象でしかないのは西洋の古典を自家薬籠中のものにすれば西洋人になれると思ったからである。・・・完本 文語文(山本夏彦 著)