振動レベル計。振動に関係する業務に携わっていると何も抵抗なく理解できてしまう。しかし奥深いところは理解できていない人がたくさんいる。
まず振動レベル計の規格に関する歴史から概要を理解する。
(1)概要
振動レベル計に関する規格は、我が国の公害や作業環境で人体の全身振動評価を目的に、1976年にJISC1510として発行された。
この規格は、ISO2631:1974の評価基準曲線が参考にされている。
1990年には、振動に対する人体応答の測定器に関する規格ISO 8041が発行され、国内では1992年に計量法が改正された。改正された計量法の計量単位令においては、振動量として振動加速度レベルと振動感覚補正振動加速レベルの二つが定められた。
同法からは振動レベルの用語は消えたが、同法の特性軽量器検定検査規則で、感覚補正振動加速度レベルを振動レベルと定義していることから、振動レベルを使用することはできる。
このような国内外の動向に合わせて1994年にJISC1510の規格が見直されて、1995年は、感覚補正値は折れ線で図示されていたが、改正JISではISO8041と同じ値で、滑らかな線で図示されている。また使用周波数範囲の表示では、従来は1~90Hzとされていたものが、1~80Hzと1/3オクターブバンドの中心周波数に変更された。
一方、指示機構の動特性を決める時定数と振動加速度レベルと振動レベルの基準値は、従来のままとされた。
時定数について、0.63sはトーンバーストの振動に対する振動感覚に対応している理由から採用されており、ISOの125ms、1s及び8sなどの時定数とは一致していない。振動加速度レベルの基準値については、ISO1683では加速度実効値で10-6m/s2であるのに対して、JISでは10-5であり、基準値の違いによる加速度レベルの差異は20dBになる。
振動規制法における計測は計量法の条件に合格した振動レベル計を使用することになっているが、JIS C 1510の内容も熟知していることが必要である。ただし、計量法の計量単位規則や振動規制法は、鉛直方向のみの振動を対象にしているのに対して、JISは、水平方向の振動の計測や評価のための特性も規定している。